Nゲージは、手軽に始められる鉄道模型として多くのファンに愛されています。その魅力の一つが、自由自在に線路を敷設し、自分だけの鉄道空間を作り上げることです。しかし、Nゲージのレールには様々な種類があり、特に初心者の方は「どれを選べばいいの?」と迷ってしまうかもしれません。
この記事では、Nゲージのレール選びで迷っている初心者の方に向けて、日本で主流のKATO(カトー)とTOMIX(トミックス)の「固定式レール」に焦点を当て、その特徴や選び方を徹底比較します。この記事を読めば、あなたにぴったりのレールが見つかり、Nゲージライフがより一層楽しくなるはずです!
※カトーや海外メーカーのPECO(ペコ)からは「フレキシブルレール」も販売されていますが、本記事はNゲージ初心者の方を対象としているため、取り扱いが比較的簡単な「固定式レール」のみを扱います。
Nゲージレールの基本構造を知ろう
まず、Nゲージのレールの基本的な構造について理解しておきましょう。一般的に「線路」と「レール」は同じ意味で使われることが多いですが、この記事では説明の便宜上、以下のように区別します。
- レール: 列車が実際に走行する金属部分のこと。
- 枕木(まくらぎ): レールの下に敷かれ、レールを支える部材。
- 道床(どうしょう): 枕木の下にあり、線路全体を支える土台部分。砂利(バラスト)やコンクリートを模した形状をしています。
- 線路: 上記のレール、枕木、道床を含めた全体の総称。
コンクリート製の枕木のことをPC(プレスト・コンクリート)と呼びます。カタログでも通常「PC枕木」と記載されてますが、コンクリート製の枕木のことです。
この3つの部分が一体となって、Nゲージの列車が安定して走行するための「線路」を構成しています。

主要メーカーKATOとTOMIXのレールシステム比較
日本のNゲージ市場で主に販売されている固定式レールは、KATOとTOMIXの2大メーカーの製品です。それぞれ独自のレールシステムを展開しており、互換性はありませんので注意が必要です。
- KATO: コントローラーを含めた全体のシステムを「ユニトラック(UNITRACK)」と呼んでいます。
- TOMIX: コントローラーを含めた全体のシステムを「ファイントラック(Fine Track)」と呼んでいます。
両社のレールは、レール間の幅が9mmであることはNゲージの標準規格で統一されていますが、道床の幅や接続方法、製品ラインナップなど、それ以外の設計は異なります。ここでは、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
線路の外観の違いをチェック!
固定式レールは、2本のレールが道床と呼ばれるベースの上に固定されています。この道床は、実際の線路の見た目に近づけるため、砂利を敷き詰めたバラスト軌道や、コンクリート製のスラブ軌道の外観をしています。また、レールは枕木の上に固定されており、これらの道床や枕木のデザインがメーカーごとに少しずつ異なります。
KATO (ユニトラック) | TOMIX (ファイントラック) | |
単線の道床の幅 | 25mm | 18.5mm 37mm(ワイドPCレール) |
複線間隔 | 33mm | 37mm |
道床の外観 | バラスト スラブ | バラスト スラブ |
枕木の外観 | 木製(単線のみ) コンクリート (複線、一部ポイント) | 木製(単線のみ) コンクリート |
単線の道床の幅
- KATO(ユニトラック): 道床の幅は25mmです。
- TOMIX(ファイントラック): 道床の幅は18.5mmと、カトーよりもスリムな設計です。
- ただし、トミックスには「ワイドPCレール」という製品群もあり、こちらは道床幅が37mmとなっています。このワイドPCレールは、複線(線路を2本並べること)にした際に、線路間の隙間が埋まり、よりリアルな複線間隔を再現できるように設計されています。
道床の幅に関しては、どちらが良い・悪いということはありません。カトーの幅広な道床は安定感があり、トミックスのスリムな道床は省スペース性に優れています。ワイドPCレールは、より近代的な路線を再現したい場合に適しています。ご自身の好みやレイアウトのイメージに合わせて選びましょう。

複線間隔
線路を2本平行に敷設して複線にする場合、その線路の中心から中心までの間隔を「複線間隔」といいます。
- KATO(ユニトラック): 複線間隔は33mmです。
- TOMIX(ファイントラック): 複線間隔は37mmです。
カトーの方が4mm狭く、実際の鉄道の車両限界(車両が安全にすれ違える間隔)に近い設定となっています。そのため、よりリアルな列車同士のすれ違いシーンを楽しみたい方には、カトーのユニトラックがおすすめです。

枕木の外観(木とコンクリート)
枕木には、主に2種類の外観があります。
- 木製枕木: 昔ながらの木製の枕木を再現したものです。地方のローカル線や、少し古い時代の風景によく合います。
- コンクリート製枕木(PC枕木): 近年、都市部の路線や新幹線などで主流となっているコンクリート製の枕木を再現したものです。近代的な風景や、高速走行する列車に適しています。

自分が走らせたい列車や、作りたいレイアウトの時代設定、風景のイメージに合わせて選ぶのが良いでしょう。例えば、蒸気機関車や旧型客車には木製枕木、通勤電車や特急電車にはコンクリート製枕木が似合います。
道床の外観(バラストとスラブ)
道床の見た目も、大きく分けて2種類あります。
- バラスト道床: 実際の線路でよく見られる、砂利(バラスト)を敷き詰めた外観をしています。最も一般的で、どんな車両や風景にも合わせやすいのが特徴です。
- スラブ道床: 高架線路や新幹線、地下鉄などでよく見られる、バラストのないコンクリート製の道床を再現しています。近代的な都市部の路線や、新幹線(特に東北・上越新幹線など)を走らせる場合に、より実物に近い雰囲気を演出できます。
- カトーのユニトラックでは、スラブ道床は主に複線線路のラインナップとなります。
- トミックスのファイントラックでは、単線・複線ともにスラブ道床の製品があります。

初めてNゲージを始める場合は、汎用性の高いバラスト道床の線路を選ぶのが無難です。しかし、走らせたい列車が決まっているなら、その列車が活躍する路線のイメージに合わせて道床を選ぶと、よりリアリティが増して楽しめます。例えば、最新型の新幹線をメインに楽しみたいならスラブ道床、ローカル線をのんびり走らせたいならバラスト道床といった具合です。
レールの種類と選び方:基本編
線路の基本的な外観の違いを理解したところで、次に具体的なレールの種類と、その選び方について見ていきましょう。
単線線路と複線線路、どっちを選ぶ?
Nゲージのレールには、1本の線路で構成される「単線線路」と、2本の線路がセットになった「複線線路」があります。
- 単線線路:
- 列車を1編成だけ走らせるシンプルなレイアウトに向いています。
- 比較的少ない予算で始められ、スペースも節約できます。
- ローカル線のようなのんびりとした風景を作るのに適しています。
- もちろん、単線線路を2本購入して平行に並べれば、複線として使用することも可能です。
- 複線線路:
- 2編成の列車を同時に走らせたり、すれ違い運転を楽しんだりできます。
- よりダイナミックで賑やかなレイアウトを作りたい方におすすめです。
- 最初から2本の線路が一体となっているため、単線線路を2本並べて複線にするよりも、組み立てが簡単で、線路間の間隔も正確に保てます。
最初のうちは、単線で列車を走らせるだけでも十分に楽しめます。しかし、複数の列車を同時に動かしたり、迫力のあるすれ違いシーンを再現したい場合は、複線線路が魅力的です。ご自身の楽しみ方や予算、設置スペースなどを考慮して選びましょう。
直線線路:レイアウトの基本
直線線路は、文字通りまっすぐな線路で、Nゲージレイアウトの最も基本的な構成要素です。駅を設置したり、長い編成の列車をまっすぐ走らせたりする際に使用します。
KATOとTOMIXの直線線路の長さのラインナップ
カトーのユニトラックとトミックスのファイントラックでは、販売されている直線線路の長さのラインナップが異なります。
カトー (ユニトラック) | トミックス (ファイントラック) |
248mm 186mm 124mm 62mm その他各種 | 1120mm (複線のみ) 280mm 140mm 70mm その他各種 |
- カトーのユニトラック: 248mmが最も一般的な長さで、その半分が124mm、さらにその半分の62mmが基本モジュールとなっています。これにより、レイアウト設計時に計算しやすくなっています。
- トミックスのファイントラック: 280mmや140mmが基本的な長さとしてよく使われます。カトーとは長さの基準が異なるため、両者を混用することはできません。
レイアウトプランを考える際には、これらの基本となる長さを組み合わせて、必要な長さの直線区間を作っていきます。短い調整用の直線レールも用意されているため、細かな長さ調整も可能です。
曲線(カーブ)線路:滑らかな走行のために
曲線線路も、直線線路と同様にレイアウトを構成する上で欠かせない基本的な線路です。列車の進行方向を変え、円形や楕円形の周回コースを作るために使用します。
KATOとTOMIXの曲線線路の半径のラインナップ
曲線線路は、そのカーブの半径(Rで表記)によって種類が分かれています。半径が大きいほど緩やかなカーブになり、小さいほど急なカーブになります。
KATO (ユニトラック) | TOMIX (ファイントラック) |
R381mm R348mm R315mm R282mm R249mm* R216mm* | R391mm R354mm R317mm R280mm R243mm* |
*印の付いた半径の小さいカーブレールは、走行させる車両の長さや構造によっては、連結部分や車体が接触する可能性があります。特に新幹線や、大型の蒸気機関車などを走行させる場合は注意が必要です。
- 選び方のポイント:
- 省スペース性: 半径が小さい曲線線路を使えば、限られたスペースでも周回コースを作ることができます。トミックスの「ミニカーブレール」やカトーの「コンパクトカーブ」は、特に小さなレイアウトに適しています。
- 走行安定性と見た目: あまりに半径が小さいカーブは、列車が窮屈そうに曲がることになり、実物の列車の雰囲気からはかけ離れてしまうことがあります。また、車両によっては脱線しやすくなることもあります。
- 推奨半径: 一般的には、半径280mm以上の曲線線路を使用するのがおすすめです。これくらいの半径があれば、ほとんどのNゲージ車両がスムーズに走行でき、見た目にも自然なカーブを描けます。
上記表に記載したもの以外にも、より大きな半径の曲線線路や、ポイント(分岐器)に接続するための特殊なカーブ線路、実物の鉄道でカーブの出入り口に使われる「緩和曲線」を再現した線路などもあります。
よりリアルに!カント付き曲線線路とは?
カントとは、鉄道のカーブ区間で、カーブの外側のレールを内側のレールよりも少し高くして線路に傾きをつけることです。実物の鉄道では、列車がカーブを通過する際の遠心力を打ち消し、乗り心地を良くしたり、より高速でカーブを通過できるようにしたりする目的で設けられています。
Nゲージでも、このカントを再現した「カント付き曲線線路」が販売されています。カント付き線路を使用すると、カーブを通過する際に列車が内側に傾き、より実感的で迫力のある走行シーンを楽しむことができます。
カント付き曲線線路 製品例
KATO (ユニトラック) | TOMIX (ファイントラック) |
複線カント付線路 | ・以下のワイドPCカーブレール C280-45-WP(F) C317-45-WP(F) C354-45-WP(F) C391-45-WP(F) ・築堤大カーブS字レールセット |
- 特徴:
- 列車がカーブで傾く様子は、非常にリアルで魅力的です。
- 特に新幹線や特急列車など、高速でカーブを駆け抜けるイメージの車両に似合います。
- 全ての曲線線路にカントが付いているわけではなく、特定の製品に限られます。
- 導入時の注意点:
- カント付きレールをレイアウトに組み込む際は、カントのない通常のレールとの接続部分で段差が生じないように、専用のアプローチ線路(徐々にカントがついていく線路)を使用する必要があります。
- カトーのユニトラックでは、主に複線線路システムでカントが導入されていますが、近年では単線用のカント付きPCレールも登場しています。
- トミックスのファイントラックでは、ワイドPCレールを中心に多くのカント付きカーブレールがラインナップされており、選択肢が豊富です。
カント付きレールは、レイアウトのリアリティを格段に向上させるアイテムです。予算やスペースに余裕があれば、ぜひ導入を検討してみてください。
TOMIXから販売されている「築堤大カーブS字レールセット(品番 91045)」にはカント付き曲線線路が採用されており、かつよりリアルに表現された滑らかなカーブで非常に人気の製品です。築堤大カーブレール複線化セット(品番 91047)との組み合わせで複線化も可能です。
レールの種類と選び方:応用編
基本的な直線・曲線レールに加えて、Nゲージのレイアウトをより楽しく、複雑にするための特殊なレールも見ていきましょう。
ポイント線路:列車を操る楽しさ
ポイント線路(分岐器)は、列車の進路を切り替えるためのレールです。これを使うことで、一本の線路から別の線路へ列車を移動させたり、複数の列車を待避させたりといった、より複雑な運転操作が可能になります。
ほとんどのポイント線路は電動式で、専用のポイントスイッチを使って手元で簡単に操作できます。
KATO (ユニトラック) | TOMIX(ファイントラック) | |
主なポイントの種類 | 片開き Y字 複線片渡り 複線両渡り(ダブルクロス) 3方向ポイントなど | 片開き(合成枕木、PC枕木) Y字 3枝 複線両渡り(ダブルクロス) 片渡りクロス ダイヤモンドクロスなど |
特徴 | シンプルで扱いやすい製品が多い。特に複線間隔33mmに合わせた渡り線が充実。 | 種類が非常に豊富で、実物に近い複雑な配線や、省スペースなレイアウトにも対応しやすい |
ポイント線路の種類がKATOに比べて非常に豊富です。これにより、自分の作りたい駅の配線やヤード(車両基地)などを、より自由に、そしてリアルに再現しやすくなるという大きなメリットがあります。例えば、カーブの途中に設置できる曲線ポイントや、狭いスペースでも分岐できる小型のポイントなど、多彩なレイアウトプランに対応できます。
ポイント線路を導入すると、列車の運転が格段に面白くなります。最初は基本的な片開きポイントから始めて、徐々に複雑な配線に挑戦していくのも良いでしょう。
鉄橋・高架線路:レイアウトに高低差をプラス
Nゲージレイアウトに変化と立体感を与えるために欠かせないのが、鉄橋や高架線路です。これらを使うことで、川を渡るシーンや、都市部を走る高架路線など、よりリアルで魅力的な風景を作り出すことができます。
- 鉄橋:
- 様々なデザイン(トラス鉄橋、デッキガーダー橋など)や色の製品があります。
- 単線用、複線用があり、長さも選べます。
- 橋脚と組み合わせて使用し、川や谷を跨ぐ情景を演出します。
- 高架線路:
- 都市部の鉄道や新幹線などでよく見られる、地面より高い位置を走る線路を再現します。
- カトー、トミックスともに、高架用の橋脚や駅、スラブ軌道の高架線路などが豊富にラインナップされています。
- 高架下に建物を配置したり、下の線路と立体交差させたりすることで、レイアウトに奥行きと複雑さを加えることができます。
これらのアクセサリーパーツをうまく活用することで、平坦なレイアウトから一歩進んだ、見どころの多いジオラマへと発展させることができます。
まとめ:自分にぴったりのNゲージレールを見つけよう
ここまで、Nゲージのレール選びについて、KATO(ユニトラック)とTOMIX(ファイントラック)の比較を中心に、基本的な構造から様々な種類のレールまで解説してきました。
どちらのメーカーのレールシステムにも、それぞれ優れた点があります。
- KATO (ユニトラック):
- 道床が一体で接続が簡単、初心者にも扱いやすい。
- 複線間隔がリアルで、すれ違い運転が魅力的。
- 全体的に堅牢な作りで、耐久性にも優れていると言われます。
- TOMIX (ファイントラック):
- レールの種類、特にポイントや特殊なカーブレールが豊富で、自由度の高いレイアウト設計が可能。
- ワイドPCレールやスラブ軌道など、近代的な風景の再現に適した製品が多い。
- ミニカーブレールなど、省スペースレイアウト向けの製品も充実。
最終的にどちらを選ぶかは、あなたがNゲージで何をしたいか、どんな列車を走らせたいか、どんな風景を作りたいかによって変わってきます。
- 手軽に始めてみたい、リアルな複線運転を楽しみたい方は、カトーのユニトラックが良いかもしれません。
- より複雑で自由なレイアウトを作りたい、豊富な種類のレールから選びたい方は、トミックスのファイントラックが向いているでしょう。
この記事を参考に、それぞれの特徴をよく比較検討し、ご自身の好みや作りたいレイアウトのイメージに合ったレールを選んでください。レール選びは、Nゲージの楽しさを左右する重要な第一歩です。ぜひ、じっくりと楽しみながら、あなただけの鉄道模型ライフをスタートさせてくださいね!
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